建設・工事業の企業評価方法 ●企業評価のポイント ・建設・工事業界は、総合工事業(ゼネコン)を頂点とする典型的なピラミッド構造で、元請けの下に専門の工事事業者が下請け、孫請けと連なる重層構造となっている。業務は、土木事業と建築事業に分けられ、さらにそれぞれ公共事業と民間事業に分けられる。 ・建設業を行うには、建設業法に基づく許可が必要。さらに公共事業の入札に参加するには、経営事項審査を受ける必要がある。 ・建設・工事業独特の会計方法がある。 ・東京オリンピックやリニア中央新幹線開通等の好材料もあるものの、国内は供給過剰状態。長期的にみると海外での受注拡大がポイントとなる。 ●企業評価時の主な財務指標 建設・工事業における会計には、一般の会計と違う点が多々あるため企業評価する際には注意が必要。以下が代表的な違い。 ・売上計上基準に工事完成基準と工事進行基準がある。 「工事完成基準」・・・工事が完成し、目的物を引き渡した時点で、売上・費用を認識する方法。 「工事進行基準」・・・決算日の工事進捗度に応じて当期の売上・費用を認識する方法。 ・完成工事未収入金、未成工事支出金、工事未払金、未成工事受入金などの勘定科目を使う。 ・自己資本比率が低く、借金依存体質の企業が多い。材料仕入、外注費支払いのための立替運転資金が発生する。 ・建設業、特に公共工事の受注が中心の建設会社において、経営審査の点数をよくするために粉飾が行われやすい。代表的な粉飾の手法には以下のものがある。 「工事完成基準、工事進行基準など売上計上の基準調整」 ・・・未完成の工事を完成したと偽り売上計上する。赤字工事の売上を翌期以降に繰り延べする。 「未成工事支出金や材料等在庫の過大計上」 ・・・在庫を過大計上することで原価を減らして、利益を大きくみせる ●建設・工事業の今後の動向 ・しばらくは震災復興やインフラ強化による需要が続くものと考えられるが、それも5年程度ではとの見方が強い。 ・東京においては、2020年の東京オリンピックに向けた施設建設やインフラ整備の需要が、東京-名古屋間ではリニア中央新幹線関連の建設に伴う需要が高まるとみられる。 ・震災復興、インフラ強化、東京オリンピック終了後の国内需要は低迷する可能性が高く、大手を中心に海外受注をいかに拡大していくかが今後の課題となる。 ・2013年4月の間組と安藤建設の合併のように、将来の厳しい時代を見据えた生き残りをかけた建設会社の再編が起こる可能性が考えられる。これからを踏まえて、企業評価や評判を分析していく必要がある。 |